さるのきょうだいが、ひとつの木のまわりをぐるぐるまわって、おいかけっこをしています。
おいかけているのがおにいさんざる、にげているのがおとうとざるです。
おにいさんざるの、おいかけるはやさと、おとうとざるの、にげるはやさは、まったくおなじはやさです。
だから、おにいさんざるは、いつまでたっても、おとうとざるに、おいつきません。
おにいさんざるから見ると、おとうとざるは、いつまでたっても、木のむこうがわへと、にげていきます。
おとうとざるから見ると、おにいさんざるは、いつまでたっても、木のむこうがわから、おいかけてきます。
あるとき、おにいさんざるは思いました。
「こうやっておいかけるのも、そろそろあきてきたな。」
そこで、おにいさんざるは、いいことを思いつきました。
「そうだ。おとうとは、木のむこうがわへと、にげていく。でも、見かたをかえれば、木のむこうがわから、こちらをおいかけてくるようにも、見える。いまからこっそり、おとうとがおいかけてきていることにして、にげる気分をあじわうことにしよう。」
こうして、おにいさんざるは、おとうとざるから、にげはじめました。
もちろん、おとうとざるは、そんなことに気づくはずもありません。
さるのきょうだいが、ひとつの木のまわりを、ぐるぐるまわっています。
ちょうどおなじころ、おとうとざるは思いました。
「こうやってにげるのも、そろそろあきてきたな。」
そこで、おとうとざるは、いいことを思いつきました。
「そうだ。おにいさんは、木のむこうがわから、おいかけてくる。でも、見かたをかえれば、木のむこうがわへと、にげていくようにも、見える。いまからこっそり、おにいさんがにげていることにして、おいかける気分をあじわうことにしよう。」
こうして、おとうとざるは、おにいさんざるを、おいかけはじめました。
もちろん、おにいさんざるは、そんなことに気づくはずもありません。
さるのきょうだいが、ひとつの木のまわりをぐるぐるまわって、おいかけっこをしています。