ちいさな哲学のおはなし

清水将吾のブログ

きょうだいざるのおいかけっこ

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さるのきょうだいが、ひとつの木のまわりをぐるぐるまわって、おいかけっこをしています。

おいかけているのがおにいさんざる、にげているのがおとうとざるです。

 

おにいさんざるの、おいかけるはやさと、おとうとざるの、にげるはやさは、まったくおなじはやさです。

だから、おにいさんざるは、いつまでたっても、おとうとざるに、おいつきません。

 

おにいさんざるから見ると、おとうとざるは、いつまでたっても、木のむこうがわへと、にげていきます。

おとうとざるから見ると、おにいさんざるは、いつまでたっても、木のむこうがわから、おいかけてきます。

 

あるとき、おにいさんざるは思いました。

「こうやっておいかけるのも、そろそろあきてきたな。」

そこで、おにいさんざるは、いいことを思いつきました。

「そうだ。おとうとは、木のむこうがわへと、にげていく。でも、見かたをかえれば、木のむこうがわから、こちらをおいかけてくるようにも、見える。いまからこっそり、おとうとがおいかけてきていることにして、にげる気分をあじわうことにしよう。」

こうして、おにいさんざるは、おとうとざるから、にげはじめました。

もちろん、おとうとざるは、そんなことに気づくはずもありません。

さるのきょうだいが、ひとつの木のまわりを、ぐるぐるまわっています。

 

ちょうどおなじころ、おとうとざるは思いました。

「こうやってにげるのも、そろそろあきてきたな。」

そこで、おとうとざるは、いいことを思いつきました。

「そうだ。おにいさんは、木のむこうがわから、おいかけてくる。でも、見かたをかえれば、木のむこうがわへと、にげていくようにも、見える。いまからこっそり、おにいさんがにげていることにして、おいかける気分をあじわうことにしよう。」

こうして、おとうとざるは、おにいさんざるを、おいかけはじめました。

もちろん、おにいさんざるは、そんなことに気づくはずもありません。

 

さるのきょうだいが、ひとつの木のまわりをぐるぐるまわって、おいかけっこをしています。