ちいさな哲学のおはなし

清水将吾のブログ

魔女と奇跡のテーブル 《前》

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今日は、いつもの仲良し5人で遊園地に遊びに行った。

とても大きなジェットコースターがある遊園地だった。

ジェットコースターの前には、長い列ができていた。ならんでいるのはほとんど大人の人なのに、ぼくのほかの4人は、「のってみよう」と言いだした。

 

 僕はどうしても、そんな大きなジェットコースターにのる勇気がなかった。くやしかったけど、4人が列にならんでジェットコースターにのるあいだ、1人でほかのアトラクションに行くことにした。

「じゃあ、またあとでね」

 
1人で歩いていると、とんがり屋根の小さな家があって、ドアのうえには水色の文字で、「魔女の家へようこそ」と書いてあった。
だれもならんでいなかったし、何となく入ってみることにした。
 
木のドアをあけて中に入ってみると、緑色の石でできたテーブルの向こうがわに、カラフルな服を着たおばあさんが座っていた。
「こんにちは。どうぞ、そこのイスにおかけなさいな」
そうおばあさんが言うので、僕は緑色のテーブルのこっちがわのイスに座った。
「こんにちは」
と僕は言った。
 
 「この緑色のテーブルは、ヒスイという石でできておって、『奇跡のテーブル』と呼ばれているんじゃよ」
「奇跡のテーブル?『奇跡』って、なんでですか?」
「このテーブルのうえではな、めったに起こらないことが次々に起こるのじゃよ。」
「へえ、すごい!じゃあ、ネコがとつぜんこのテーブルのうえに出てきたりするんですか?」
 「フフフ。それは無理じゃよ。ネコがとつぜん出てくるなんてのは、『ぜったいに起こらないこと』じゃろ?このテーブルのうえで起こるのは、あくまで『めったに起こらないこと』じゃよ」
 
おばあさんはそう言うと、トランプのたばを出して、カードをテーブルのうえにならべはじめた。
カードをぜんぶならべおわると、
「この中から4枚のカードをひいたとして、めったに起こらないのは、どんなことじゃろうな」
とおばあさんは言った。
「うーんと、4枚ともエースのカードをひくっていうのは、めったに起こらないかな」
「じゃあ、4枚ひいてごらん」
 
僕が4枚のカードを何げなくえらんで手にもつと、
「何のカードじゃろな。見てごらん」
とおばあさんは言った。
「す、すごい!」
なんと4枚のカードは、スペードのエース、ダイヤのエース、クローバーのエース、ハートのエースだった!
 
「すごいですね!このテーブルには、不思議な力があるんですね!」
「不思議な力?そんなものはありゃしないよ。」

 

 

《つづく》