ある日、森の道を歩いていると、キツネが立っていました。
「やあ」
とキツネは言いました。
キツネが立っているそばには、大きくてりっぱな箱が置いてあります。
その大きな箱は、大きなフックでとじられていて、フックには、
「明日あけること」
と書いてあります。
「この箱、明日になったらあけるんだ」
とキツネは言いました。
「中には何が入っているの?」
「それはあけてからのお楽しみさ。」
「じゃあ、明日見にきてもいい?」
「もちろんいいよ。」
つぎの日になって、また森の道を歩いていくと、きのうのキツネが立っていました。
大きな箱もあります。
「やあ」
とキツネは言いました。
「この箱、明日になったらあけるんだ」
「え?今日あけると思ったからやってきたのに。」
「今日はあけないよ。フックに、『明日あけること』って書いてあるだろ?」
「そんなことを言ったら、きみは明日も同じことを言って、その次の日も同じことを言って、またその次の日も同じことを言って、いつまでたっても箱をあけられないよ。」
「そうともかぎらないさ。」
そうキツネは言って、青い宝石のついた古いめがねをとりだしました。
「このめがねをかけてごらん。明日のようすが見えるよ。」
めがねをかけてみると、大きな箱があいているのが見えました。
箱の中には、青い宝石のついためがねが入っています。
「箱の中には、このめがねと同じめがねが入ってるんだね!」
「それはどうかな」
とキツネは言いました。
「そのめがねは、この世にひとつしかないんだよ。きみがいまかけているんだから、箱の中に入っているわけがない。」
「じゃあ、きみがこれからこのめがねを箱の中に入れることになっているんだね。」
「たぶん、そうだろうね。」
「でも、いつ入れるの?」
「さあ、この箱は今日はあけられないから、明日じゃないかな。」