《つづき》
その翌日、卒業式。
昨日のあの電話は、不思議な夢をみているようだったけど、夢ではなかった。
信じられないような話だけど、信じたい気持ちがある。
おじいちゃんとおばあちゃんは、未来でどんな暮らしをしていたのだろう。
いろいろな思いが浮かんで、気持ちが高ぶったまま、僕は高校の大講堂の席に座っていた。
卒業生の名前が順番に呼ばれ、一人ずつステージにのぼり、卒業証書がわたされる。
興奮していろいろ考えていたせいか、あっというまに僕の番が来た。
僕の名前が呼ばれて、立ち上がって歩き、ステージへの階段をのぼる。
卒業証書を受けとり、座席のほうをふり返ると、遠くのほう、一番うしろの出入口のそばに立って、手をふっている人たちがいる。
おじいちゃんとおばあちゃんだ。
未来から見にきてくれたんだ。
おばあちゃんの横には、小さな女の子が立っていて、おばあちゃんと手をつないでいた。
おじいちゃんとおばあちゃんが亡くなってから、僕は、二人が天国から見守ってくれていると思っていた。
それがまさか、未来から見守ってくれているなんて。
きっと、大学の入学式にも来てくれるだろう。
そしてその先もずっと、僕の将来を見にきてくれるにちがいない。
僕は座席にもどり、座った。
ふり向いて、うしろの出入口のほうを見ると、おじいちゃんとおばあちゃんと女の子は、もういなかった。
僕はうれしい気持ちのなか、ふとこんなことを思った。
もしかすると、さっき手をふっていたおじいちゃんとおばあちゃんは、未来からではなく、天国からやってきたんじゃないだろうか。
すると昨日の電話は、未来からの電話じゃなくて、あの世からの電話…?
どちらにしても、僕にとっては同じことかもしれない。
おじいちゃんとおばあちゃんは亡くなってしまったけれど、どこかから見守ってくれている。
それは未来からかもしれないし、天国からかもしれない。
《おわり》