あなたはいつも、私においしい料理を作ってくれる。
でも、私に食べさせてくれるだけで、自分では食べない。
私があなたの料理を食べようとすると、あなたはもういなくなっている。
一度でいいから、あなたといっしょに食べてみたいなあ。
いつもありがとう、過去の私。
あなたはいつも、私においしい料理を作ってくれる。
でも、私に食べさせてくれるだけで、自分では食べない。
私があなたの料理を食べようとすると、あなたはもういなくなっている。
一度でいいから、あなたといっしょに食べてみたいなあ。
いつもありがとう、過去の私。
まじめな5人ぐみは、
山へあそびにいきました。
まじめな5人は、
いっしょにちずをみて、
山のみちをあるき、
山のてっぺんまでたどりつきました。
5人はそこで、しきものを広げて、
おべんとうをたべました。
そして、またいっしょにちずをみながら、
山をおりて、
かえっていきました。
しっかりものの5人ぐみは、
まちへあそびにいきました。
しっかりものの5人は、
バスにのって、
地下てつにのって、
大きなはくぶつかんへとやってきました。
はくぶつかんのなかを見てまわったあとは、
また地下てつにのりました。
そして、まちでいちばんたかいタワーを見て、
おみやげを買って、
かえっていきました。
のんびりやの5人ぐみは、
海へあそびにいきました。
のんびりやの5人は、
とおくのほうに、
白いとうだいを見つけると、
そこまであるいていくことにしました。
すなはまをあるきながら、
貝がらや、
まるくなったガラスをひろっているうちに、
すっかり夕がたになりました。
5人は、とうだいへいくのをあきらめて、
かえっていきました。
北の空をとぶタカは、
こんなものをみました。
北の空をとぶタカのいるところから、
まっすぐ東へとんでいき、
池のほとりでやすんでいた、
二羽のカモは、
こんなものをみました。
北の空をとぶタカが、
くちばしにくわえていたイモムシをうっかりおとしてしまうと、
空からくさむらにおちてきたイモムシは、
こんなものをみました。
さて、南では、なにがみえたでしょう?
わかりましたか?
南では、
にじがみえました。
ウェンディーのお父さんとお母さんが出かけていった夜、ピーター・パンは、窓から子ども部屋へと入ってきました。
そして、ピーターは、ウェンディーにシンデレラの物語をおしえてもらい、うれしくなってしまいました。
それで、ウェンディーにもっとたくさんの物語をきかせてもらいたくなって、ウェンディーをつれていこうとしているのです。
自分についてくれば人魚にだって会えるとピーターが言うと、ウェンディーはついていきたくなってしまいました。
でも、まだ、決心がつかないでいます。
するとピーターは、必死になってこう言いました。
「それにじつは、きみがぼくといっしょに来てくれないと、大変なことになってしまうんだ。」
「大変なことって?」
「きみがきてくれないと、この物語はここで終わってしまうんだよ。」
「この物語がここで終わってしまう?」
「そう。きみと弟たちが、ぼくらと冒険する物語だよ。」
「そんな物語、聞いたこともないわ。」
「そりゃそうさ。まだまだ始まったばかりの物語なんだからね。」
「そんな物語、一体だれが考えたっていうの?」
とウェンディーはたずねました。
「ジョージさんだよ。」
「ジョージさん?」
「そう、ジョージさんという人がいて、この物語を考えているんだ。きみが来てくれないと、冒険がはじまらなくて、ジョージさんは物語を考えるのをやめてしまうんだよ!」
「ジョージさんが物語を考えるのをやめてしまうと、どうなってしまうの?」
ウェンディーが聞くと、ピーターはますます興奮して言いました。
「ぼくたち、いなくなっちゃうんだよ!」
「それは大変!」
と、ウェンディーも興奮ぎみになって言いました。そして、
「私があなたについていかないと決めたら、その瞬間に、私たちは消えていなくなってしまうの?」
とピーターにたずねました。
「そうかもしれない。でも、もしかしたら、きみがぼくについてこないと決めたら、ぼくたちは、最初からいなかったことになってしまうかもしれない。」
「最初から?」
「そうさ。ようするに、ぼくたちは生まれてさえこなかったことになってしまうかもしれないのさ!」
「まあ、なんてひどいこと!」
そのようなわけで、ウェンディーは弟たちと、ピーター・パンについていくことにした・・・のかもしれません。
《つづき》
その翌日、卒業式。
昨日のあの電話は、不思議な夢をみているようだったけど、夢ではなかった。
信じられないような話だけど、信じたい気持ちがある。
おじいちゃんとおばあちゃんは、未来でどんな暮らしをしていたのだろう。
いろいろな思いが浮かんで、気持ちが高ぶったまま、僕は高校の大講堂の席に座っていた。
卒業生の名前が順番に呼ばれ、一人ずつステージにのぼり、卒業証書がわたされる。
興奮していろいろ考えていたせいか、あっというまに僕の番が来た。
僕の名前が呼ばれて、立ち上がって歩き、ステージへの階段をのぼる。
卒業証書を受けとり、座席のほうをふり返ると、遠くのほう、一番うしろの出入口のそばに立って、手をふっている人たちがいる。
おじいちゃんとおばあちゃんだ。
未来から見にきてくれたんだ。
おばあちゃんの横には、小さな女の子が立っていて、おばあちゃんと手をつないでいた。
おじいちゃんとおばあちゃんが亡くなってから、僕は、二人が天国から見守ってくれていると思っていた。
それがまさか、未来から見守ってくれているなんて。
きっと、大学の入学式にも来てくれるだろう。
そしてその先もずっと、僕の将来を見にきてくれるにちがいない。
僕は座席にもどり、座った。
ふり向いて、うしろの出入口のほうを見ると、おじいちゃんとおばあちゃんと女の子は、もういなかった。
僕はうれしい気持ちのなか、ふとこんなことを思った。
もしかすると、さっき手をふっていたおじいちゃんとおばあちゃんは、未来からではなく、天国からやってきたんじゃないだろうか。
すると昨日の電話は、未来からの電話じゃなくて、あの世からの電話…?
どちらにしても、僕にとっては同じことかもしれない。
おじいちゃんとおばあちゃんは亡くなってしまったけれど、どこかから見守ってくれている。
それは未来からかもしれないし、天国からかもしれない。
《おわり》
《つづき》
僕は何が何だかわからないまま、電話に出た。
「もしもし。」
すると、電話の向こうから、女の人の声が聞こえてきた。
「あ、つながった!よかったあ。」
「もしもし、どなたですか?」
と、僕はおそるおそる聞いてみた。
「驚かせてすみません。信じられないかもしれませんが、私はあなたの子孫です。タイムフォンというものを使って、遠い未来から電話をかけています。」
僕の子孫?遠い未来?僕は立ったまま頭がクラクラしてしまい、ベッドに腰をかけた。
僕がぼうぜんとしてだまっていると、電話の声はこんなふうに言った。
「この電話をかけるとき、あなたのおじいちゃんとおばあちゃんが使っていた電話回線を経由したんです。」
「おじいちゃんとおばあちゃん?」
僕は、電話が鳴ったときに表示されていた電話番号のことを思った。
「はい、おじいちゃんとおばあちゃんです。私は幼いころ、あなたのおじいちゃんとおばあちゃんに育ててもらっていたんです。」
「ちょっと…何がどうなっているのか…」
僕の頭はすっかり混乱していた。
すると電話の女の人は言った。
「ごめんなさい。ちゃんと説明しますね。私の両親は、タイムマシンを作る仕事をしているんです。私が生まれたとき、二人は仕事でものすごく忙しくて、私の面倒をみられる人が、誰もいなかったんです。」
「そちらの世界、つまり未来の世界には、タイムマシンがあるんですか?」
「はい、タイムフォンができてからしばらくして、一台目のタイムマシンが完成しました。ちょうど私が生まれたころです。」
「すごい。」
「私の両親は、タイムフォンを使って、私を育ててくれる先祖を探しました。もし引き受けてくれる先祖がいれば、私を安心してあずけられると考えたのです。」
「それで、僕のおじいちゃんとおばあちゃんが…」
「そうなんです。ずいぶん悩んだようですが、孫が東京へ行ってさびしくなったと言って、引き受けてくれたんだそうです。そこで私の両親は、できたばかりのタイムマシンを使って、あなたのおじいちゃんとおばあちゃんを、こちらに呼び寄せたのです。」
「もしそうだとしたら、おじいちゃんとおばあちゃんは、あまり長生きしなかったと思っていたけど、本当はもっと長生きしていたということですか?」
「そのとおりです。私が十歳になるまで、こちらでいっしょに暮らしていましたから。おじいちゃんとおばあちゃんは、よくあなたの話をしていました。そんなあなたに、本当のことをお話ししたいと思って、こうして電話をすることにしたのです。」
「十年間も未来にいたなんて…」
「はい。でもそのかわり、私の両親は、おじいちゃんとおばあちゃんの望みをかなえてあげることにしました。」
「おじいちゃんとおばあちゃんの望み?」
「ごめんなさい、もう通話が切れてしまいます…」
電話は、そこで切れてしまった。
《つづく》
僕の机には、二枚の写真がかざってある。
一枚は、昔うちにいた猫の写真。もう一枚は、亡くなったおじいちゃんとおばあちゃんが二人で写っている写真。
うちの家族は、僕が中学に入学するとき、東京へ引っ越してきた。
それまでは、写真のおじいちゃんとおばあちゃんの家の近くに住んでいた。
近くに住んでいたとき、おじいちゃんとおばあちゃんの家には、よく遊びにいっていた。
僕が赤ちゃんのころは、おじいちゃんとおばあちゃんが僕を育ててくれていたと聞いている。
でも、東京に来てから、おじいちゃんとおばあちゃんに会うことは、ほとんどなくなってしまった。
僕が東京の中学に入ってから、おじいちゃんとおばあちゃんは、急に体が弱っていったようだった。
僕が中学三年生のとき、おじいちゃんが亡くなってしまった。
その翌年、僕が高校一年生のとき、おばあちゃんが亡くなってしまった。
明日は高校の卒業式。
おじいちゃんとおばあちゃんが生きていたら、とても喜んでくれたと思う。
喜ばせてあげたかったなあと思う。
写真を見ながらそんなふうに思っていると、机に置いてある携帯電話が鳴りはじめた。
手にとってみると、見慣れた電話番号が表示されている。
僕は目を疑った。というのも、表示されているのが、おじいちゃんとおばあちゃんの家の電話番号だったからだ。
《つづく》