ちいさな哲学のおはなし

清水将吾のブログ

グランド・トラベラーズ《3》

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《つづき》

その翌日、卒業式。

 

昨日のあの電話は、不思議な夢をみているようだったけど、夢ではなかった。

信じられないような話だけど、信じたい気持ちがある。

おじいちゃんとおばあちゃんは、未来でどんな暮らしをしていたのだろう。

いろいろな思いが浮かんで、気持ちが高ぶったまま、僕は高校の大講堂の席に座っていた。

 

卒業生の名前が順番に呼ばれ、一人ずつステージにのぼり、卒業証書がわたされる。

興奮していろいろ考えていたせいか、あっというまに僕の番が来た。

 

僕の名前が呼ばれて、立ち上がって歩き、ステージへの階段をのぼる。

卒業証書を受けとり、座席のほうをふり返ると、遠くのほう、一番うしろの出入口のそばに立って、手をふっている人たちがいる。

おじいちゃんとおばあちゃんだ。

未来から見にきてくれたんだ。

おばあちゃんの横には、小さな女の子が立っていて、おばあちゃんと手をつないでいた。


おじいちゃんとおばあちゃんが亡くなってから、僕は、二人が天国から見守ってくれていると思っていた。

それがまさか、未来から見守ってくれているなんて。

きっと、大学の入学式にも来てくれるだろう。

そしてその先もずっと、僕の将来を見にきてくれるにちがいない。


僕は座席にもどり、座った。

ふり向いて、うしろの出入口のほうを見ると、おじいちゃんとおばあちゃんと女の子は、もういなかった。

僕はうれしい気持ちのなか、ふとこんなことを思った。

もしかすると、さっき手をふっていたおじいちゃんとおばあちゃんは、未来からではなく、天国からやってきたんじゃないだろうか。

すると昨日の電話は、未来からの電話じゃなくて、あの世からの電話…?

 

どちらにしても、僕にとっては同じことかもしれない。

おじいちゃんとおばあちゃんは亡くなってしまったけれど、どこかから見守ってくれている。

それは未来からかもしれないし、天国からかもしれない。


《おわり》