ちいさな哲学のおはなし

清水将吾のブログ

ポストのたくさんある街

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この街に住む人々は、

手紙を書くのが大好きです。

 

毎日、たくさんの人が手紙を出すので、

街にはたくさんのポストがあります。

 

あるとき、

こんな意見を言った人がいました。

 

「ポストの背をもっと高くしよう。

そうすれば、どこにいても、

すぐにポストを見つけられる。」

 

そう、この街では、

公園へ行っても、カフェへ行っても、

手紙を書いている人が

あちらこちらにいます。

 

そんな人たちが、

さあ手紙を書き終えたというとき、

ポストの背が高ければ、

すぐに見つけて、

手紙を出せるではありませんか。

 

街の人々は、この意見に賛成しました。

そして、街のポストの背をぜんぶ、うんと高くしました。

 

ところが、人々は気づきました。

 

「ポストがすぐに見つかるのはよいけれども、

 手紙の入口に、手がとどかなくなってしまった。」

 

それでも、私にとっては便利になったのです。

家のそとへ出なくても、

窓から手紙を出せるようになりました。

 

アパートの4階に住んでいるからです。

 

おや、今日もまた来ました。

窓から手紙を出しておいてほしいという人です。

 

それでは、またお便りしますね。

 

 

 

石にはなにがつつまれているでしょう?:カヌーとフェリーのおはなし7

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大きな耳のカヌーと、

大きな目のフェリーが、

おはなしをしています。

 

カヌー「じゃんけんってさ、チョキがハサミで、パーが紙で、グーが石でしょ?」

フェリー「そうだね。」

カヌー「パーがグーに勝つのは、どうして?」

フェリー「紙は石をつつめるからだよ。」

カヌー「つつめると勝ちなのか。ふむ、じゃあさ・・・」

 

カヌーはそういいながら、

なにももっていない右手を

フェリーに見せて、

その手をとじました。

 

カヌー「この手のなかには、なにがあるでしょう?」

フェリー「なんにもない。」

カヌー「ざんねん!ようく考えてみて。」

 

フェリー「手品かい?じつはコインがはいっているとか?」

カヌー「手品じゃないんだよなぁ。」

 

フェリー「うーん。さっぱりわからないや。まいった。こうさんだよ。」

 

カヌーは、とじていた手を、

ゆっくりとひろげました。

 

フェリー「やっぱりなんにもないじゃないか。」

 

カヌー「ほら、よくみて。グーのなかには、パーがありました。石のなかには、紙がつつまれていました。」

 

 

翼の記憶

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はるかとおい

とおいむかし、

地上に

人間はいませんでした。

 

人間は、

空気をつつむ

翼をもち、

空をとんでいました。

 

あるときから、

人間は、

いろいろなものがある

地上でくらしたいと

思うようになりました。

 

地上を歩いて、

走るためには、

たくさんの空気を

すったりはいたり

しなければなりません。

 

そこで人間は、

翼でむねをくるんで、

むねのなかに

空気をつつめるようにしました。

 

翼のほねはのちに、

「あばらぼね」と

よばれるようになりました。

 

地上でくらしていて、

つらいことがあると、

むねが苦しくなったり、

痛くなったりします。

 

翼が、おもいきり広がって、

空へとかえりたがっているのです。 

 

 

まほうのまど:カヌーとフェリーのおはなし6

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大きな耳のカヌーと、大きな目のフェリーが、おはなしをしています。

 

フェリー「やあ、ひさしぶり。」

カヌー「ひさしぶり?そうだっけ。」

フェリー「あいかわらずだなあ。何をよんでいたんだい?」

 

カヌー「ああ、これね。まんがだよ。」

フェリー「へえ。おもしろい?」

カヌー「おもしろいよ。ところでさ、これをよんでいて、変に思ったんだ。」

フェリー「変に思った?」

カヌー「うん。ほら、ここに野ウサギが出てきて、『真っ赤なイチゴがあるぞ』って言ってる。」

フェリー「言ってるね。」

カヌー「でも、ほら、このイチゴ、ぜんぜん赤くない。赤くなくて、黒い。」

 

フェリー「カヌー、それは、まんがが黒いインクでかかれているからだよ。イチゴの赤い色が、黒いインクでぬってかかれているんだ。」

カヌー「え、それじゃあ、このまんがの世界にも、ほんとうは赤い色があるの?」

フェリー「そうだよ。あるよ。」

カヌー「青とか緑も?」

フェリー「うん、あると思うよ。」

 

カヌー「それはふしぎだなあ。」

フェリー「どこがふしぎ?」

カヌー「まんがの世界にも、いろんな色がある。それなのに、まんがのコマからその世界をのぞくと、色がなくなっちゃうなんて。」

フェリー「そんなふうに考えると、たしかにふしぎだね。」

カヌー「まるでまんがのコマが、色をなくしちゃうまほうのまどみたいだ。」

 

フェリー「おもしろい考えだね。じゃあ、 色のついたまんがはどうかな。色のついたまんがのコマは、まほうのまどではないよね。」

カヌー「うーん、色をなくしちゃうまどがあるくらいだから、あやしいなあ。」

フェリー「どういうこと?」

カヌー「色のついたまんがも、コマが色を変えちゃうまほうのまどだったら、どうしよう。ほんとうの色とは、ぜんぜんちがう色になっているかもしれない。」

 

 

宇宙蓄音機

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「蓄音機」というものを

しっていますか

 

音をきろくした

えんばんをのせると

ラッパのかたちをしたところから

音がでるキカイです

 

「宇宙蓄音機」を

しっていますか

 

すべての星が

死をむかえると

宇宙はえいえんの闇に

つつまれます

 

そのとき

いきものたちが歌った

すべての歌が

宇宙蓄音機から

ながれはじめるのです

 

あるバーへのご招待

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そのバーには、

とても長い木のカウンターがある。
 

熟成の進んだものが飲みたければ、

カウンターの奥へ行くとよい。

長い時間をかけて、

木の香りのよくしみこんだ飲み物が、

カウンターの奥では楽しめる。

 

熟成のあまり進んでいないものが飲みたければ、

カウンターの手前のほうがよい。

できたての液体のフレッシュな味わいが、

カウンターの手前のほうでは楽しめる。

 

そして、カウンターの一番手前には、

青々としげった葉がある。

この葉が昼のあいだに太陽を受けて、

甘い液体をつくりだす。

 

たっぷりとつくられた甘い液体は、

木のなかを通って運ばれていく。

 

この液体の味と香りを求めて、

今夜もこのバーに、

いろんな客が集まってくる。