大きな耳のカヌーと、
大きな目のフェリーが、
おはなしをしています。
フェリー「今日はかなりすずしいね。」
カヌー「そうだね。すこしさむいくらいだね。」
フェリー「まきわりは、もうすんだかい?」
カヌー「そうだ。冬がくるまえに、まきわりをすませなきゃいけない。」
フェリー「まだすませていないんだね。」
カヌー「へへへ。」
カヌーは、はずかしそうに笑いました。
カヌー「やらなきゃいけないのはわかってるんだけどね。今日じゃなくてもいいやって、思ってしまうんだ。」
フェリー「そうやって、ずっと先のばしにしているのかい?」
カヌー「そうなんだ。でも、しかたないんだよ。」
フェリー「しかたない?」
カヌー「今日じゃなくてもいいや。明日にしよう。そう決心することはあるんだ。ところがね。」
フェリー「ところが?」
カヌー「一晩ねむって明日になると、明日だった日が今日になっていて、今日じゃなくてもいいやって、また思ってしまうんだ。」
フェリー「なるほど。そんなことをくりかえしていたら、ずっと先のばしになるわけだよ。」
カヌー「どうすればいいのかな。」
カヌーもフェリーも、
こまった顔になりました。
カヌー「思うんだけどさ、今日なんていう日は、なくなってしまえばいいんだよ。」
フェリー「今日が?なくなってしまう?」
カヌー「うん。今日がなくなってしまえばさ、今日じゃなくてもいいやって思うことだって、なくなるんだから。」
フェリー「ううーん、どういうことかな。」
カヌー「とにかく、どんな日でも、はれの日でもあめの日でも、出かける日でも出かけない日でも、それが今日になるから、やりたくなくなるんだよ、まきわりをさ。」
フェリー「だからって、今日という日をなくせばいいっていうのかい?」
カヌー「そう。今日という日さえなければ、まきわりなんて、とっくにすませてるよ。」
カヌーはうれしそうな顔で笑っています。
フェリーはますますこまった顔になりました。