ちいさな哲学のおはなし

清水将吾のブログ

先のばしをやめるには?:カヌーとフェリーのおはなし8

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大きな耳のカヌーと、

大きな目のフェリーが、

おはなしをしています。

 

 

フェリー「今日はかなりすずしいね。」

 カヌー「そうだね。すこしさむいくらいだね。」

フェリー「まきわりは、もうすんだかい?」

カヌー「そうだ。冬がくるまえに、まきわりをすませなきゃいけない。」

フェリー「まだすませていないんだね。」

カヌー「へへへ。」

 

カヌーは、はずかしそうに笑いました。

 

カヌー「やらなきゃいけないのはわかってるんだけどね。今日じゃなくてもいいやって、思ってしまうんだ。」

フェリー「そうやって、ずっと先のばしにしているのかい?」

カヌー「そうなんだ。でも、しかたないんだよ。」

フェリー「しかたない?」

カヌー「今日じゃなくてもいいや。明日にしよう。そう決心することはあるんだ。ところがね。」

フェリー「ところが?」

カヌー「一晩ねむって明日になると、明日だった日が今日になっていて、今日じゃなくてもいいやって、また思ってしまうんだ。」

フェリー「なるほど。そんなことをくりかえしていたら、ずっと先のばしになるわけだよ。」

カヌー「どうすればいいのかな。」

 

カヌーもフェリーも、

こまった顔になりました。

 

カヌー「思うんだけどさ、今日なんていう日は、なくなってしまえばいいんだよ。」

フェリー「今日が?なくなってしまう?」

カヌー「うん。今日がなくなってしまえばさ、今日じゃなくてもいいやって思うことだって、なくなるんだから。」

フェリー「ううーん、どういうことかな。」

カヌー「とにかく、どんな日でも、はれの日でもあめの日でも、出かける日でも出かけない日でも、それが今日になるから、やりたくなくなるんだよ、まきわりをさ。」

フェリー「だからって、今日という日をなくせばいいっていうのかい?」

カヌー「そう。今日という日さえなければ、まきわりなんて、とっくにすませてるよ。」

 

カヌーはうれしそうな顔で笑っています。

フェリーはますますこまった顔になりました。