大きな耳のカヌーと、大きな目のフェリーが、おはなしをしています。
フェリー「やあ、ひさしぶり。」
カヌー「ひさしぶり?そうだっけ。」
フェリー「あいかわらずだなあ。何をよんでいたんだい?」
カヌー「ああ、これね。まんがだよ。」
フェリー「へえ。おもしろい?」
カヌー「おもしろいよ。ところでさ、これをよんでいて、変に思ったんだ。」
フェリー「変に思った?」
カヌー「うん。ほら、ここに野ウサギが出てきて、『真っ赤なイチゴがあるぞ』って言ってる。」
フェリー「言ってるね。」
カヌー「でも、ほら、このイチゴ、ぜんぜん赤くない。赤くなくて、黒い。」
フェリー「カヌー、それは、まんがが黒いインクでかかれているからだよ。イチゴの赤い色が、黒いインクでぬってかかれているんだ。」
カヌー「え、それじゃあ、このまんがの世界にも、ほんとうは赤い色があるの?」
フェリー「そうだよ。あるよ。」
カヌー「青とか緑も?」
フェリー「うん、あると思うよ。」
カヌー「それはふしぎだなあ。」
フェリー「どこがふしぎ?」
カヌー「まんがの世界にも、いろんな色がある。それなのに、まんがのコマからその世界をのぞくと、色がなくなっちゃうなんて。」
フェリー「そんなふうに考えると、たしかにふしぎだね。」
カヌー「まるでまんがのコマが、色をなくしちゃうまほうのまどみたいだ。」
フェリー「おもしろい考えだね。じゃあ、 色のついたまんがはどうかな。色のついたまんがのコマは、まほうのまどではないよね。」
カヌー「うーん、色をなくしちゃうまどがあるくらいだから、あやしいなあ。」
フェリー「どういうこと?」
カヌー「色のついたまんがも、コマが色を変えちゃうまほうのまどだったら、どうしよう。ほんとうの色とは、ぜんぜんちがう色になっているかもしれない。」