ちいさな哲学のおはなし

清水将吾のブログ

まほうのまど:カヌーとフェリーのおはなし6

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大きな耳のカヌーと、大きな目のフェリーが、おはなしをしています。

 

フェリー「やあ、ひさしぶり。」

カヌー「ひさしぶり?そうだっけ。」

フェリー「あいかわらずだなあ。何をよんでいたんだい?」

 

カヌー「ああ、これね。まんがだよ。」

フェリー「へえ。おもしろい?」

カヌー「おもしろいよ。ところでさ、これをよんでいて、変に思ったんだ。」

フェリー「変に思った?」

カヌー「うん。ほら、ここに野ウサギが出てきて、『真っ赤なイチゴがあるぞ』って言ってる。」

フェリー「言ってるね。」

カヌー「でも、ほら、このイチゴ、ぜんぜん赤くない。赤くなくて、黒い。」

 

フェリー「カヌー、それは、まんがが黒いインクでかかれているからだよ。イチゴの赤い色が、黒いインクでぬってかかれているんだ。」

カヌー「え、それじゃあ、このまんがの世界にも、ほんとうは赤い色があるの?」

フェリー「そうだよ。あるよ。」

カヌー「青とか緑も?」

フェリー「うん、あると思うよ。」

 

カヌー「それはふしぎだなあ。」

フェリー「どこがふしぎ?」

カヌー「まんがの世界にも、いろんな色がある。それなのに、まんがのコマからその世界をのぞくと、色がなくなっちゃうなんて。」

フェリー「そんなふうに考えると、たしかにふしぎだね。」

カヌー「まるでまんがのコマが、色をなくしちゃうまほうのまどみたいだ。」

 

フェリー「おもしろい考えだね。じゃあ、 色のついたまんがはどうかな。色のついたまんがのコマは、まほうのまどではないよね。」

カヌー「うーん、色をなくしちゃうまどがあるくらいだから、あやしいなあ。」

フェリー「どういうこと?」

カヌー「色のついたまんがも、コマが色を変えちゃうまほうのまどだったら、どうしよう。ほんとうの色とは、ぜんぜんちがう色になっているかもしれない。」