ちいさな哲学のおはなし

清水将吾のブログ

ふしぎなくつやさん《1》

f:id:shogoshimizu:20160821211035p:plain

 

あるはれた日、

まちをあるいていると、見たことのない、

ちいさなおみせがありました。

 

それは、あたらしくできたばかりの、

くつやでした。

 

ぴかぴかのガラスのむこうに、 

みどり、くろ、ちゃいろ、あかの、

ぴかぴかのかわぐつ。

 

おみせのなかにはいって、

もっとくつを見たくなりました。

 

おみせのドアをあけると、

「こんにちは」

と、おじいさんが、

つくえのむこうから、むかえてくれました。

「こんにちは」

と、こちらも、ぼうしをとって、

あいさつをしました。

 

おじいさんのつくえには、

つくりかけのくつがひとつ、おいてあります。

「このみせにあるくつは、ぜんぶわたしがつくっているんですよ」

と、おじいさんはおしえてくれました。

 

おみせのたなには、いろんなかたちの、

いろとりどりのかわぐつが、

きれいにならんでいます。

まるでくつが、ゆたかに実った、

たくさんのくだもののようです。

 

それを見ているうち、

どうしても一足、

ほしくなってきました。

 

くつをひとつひとつ、手にとって、

ようく見ました。

そして、ふかいあおいろをした、

つまさきのまるいくつに、

すっかり見とれてしまいました。

 

そのくつをもって、

おじいさんのつくえのところまでいき、

「あのう、このくつを、買いたいのですが」

と、はなしかけました。

 

《つづく》