ちいさな哲学のおはなし

清水将吾のブログ

ピーター・パンとウェンディーは、こんな話をしたかもしれない

 f:id:shogoshimizu:20160423153116p:plain

 

ウェンディーのお父さんとお母さんが出かけていった夜、ピーター・パンは、窓から子ども部屋へと入ってきました。

 

そして、ピーターは、ウェンディーにシンデレラの物語をおしえてもらい、うれしくなってしまいました。

それで、ウェンディーにもっとたくさんの物語をきかせてもらいたくなって、ウェンディーをつれていこうとしているのです。

 

自分についてくれば人魚にだって会えるとピーターが言うと、ウェンディーはついていきたくなってしまいました。

でも、まだ、決心がつかないでいます。

 

するとピーターは、必死になってこう言いました。

「それにじつは、きみがぼくといっしょに来てくれないと、大変なことになってしまうんだ。」

「大変なことって?」

「きみがきてくれないと、この物語はここで終わってしまうんだよ。」

「この物語がここで終わってしまう?」

「そう。きみと弟たちが、ぼくらと冒険する物語だよ。」

「そんな物語、聞いたこともないわ。」

「そりゃそうさ。まだまだ始まったばかりの物語なんだからね。」

 

「そんな物語、一体だれが考えたっていうの?」

とウェンディーはたずねました。

「ジョージさんだよ。」

「ジョージさん?」

「そう、ジョージさんという人がいて、この物語を考えているんだ。きみが来てくれないと、冒険がはじまらなくて、ジョージさんは物語を考えるのをやめてしまうんだよ!」

「ジョージさんが物語を考えるのをやめてしまうと、どうなってしまうの?」

ウェンディーが聞くと、ピーターはますます興奮して言いました。

「ぼくたち、いなくなっちゃうんだよ!」

 

「それは大変!」

と、ウェンディーも興奮ぎみになって言いました。そして、

「私があなたについていかないと決めたら、その瞬間に、私たちは消えていなくなってしまうの?」

とピーターにたずねました。

「そうかもしれない。でも、もしかしたら、きみがぼくについてこないと決めたら、ぼくたちは、最初からいなかったことになってしまうかもしれない。」

「最初から?」

「そうさ。ようするに、ぼくたちは生まれてさえこなかったことになってしまうかもしれないのさ!」

「まあ、なんてひどいこと!」

 

そのようなわけで、ウェンディーは弟たちと、ピーター・パンについていくことにした・・・のかもしれません。