ちいさな哲学のおはなし

清水将吾のブログ

グランド・トラベラーズ《1》

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僕の机には、二枚の写真がかざってある。

一枚は、昔うちにいた猫の写真。もう一枚は、亡くなったおじいちゃんとおばあちゃんが二人で写っている写真。

 

うちの家族は、僕が中学に入学するとき、東京へ引っ越してきた。

それまでは、写真のおじいちゃんとおばあちゃんの家の近くに住んでいた。

近くに住んでいたとき、おじいちゃんとおばあちゃんの家には、よく遊びにいっていた。

僕が赤ちゃんのころは、おじいちゃんとおばあちゃんが僕を育ててくれていたと聞いている。

でも、東京に来てから、おじいちゃんとおばあちゃんに会うことは、ほとんどなくなってしまった。

 

僕が東京の中学に入ってから、おじいちゃんとおばあちゃんは、急に体が弱っていったようだった。

僕が中学三年生のとき、おじいちゃんが亡くなってしまった。

その翌年、僕が高校一年生のとき、おばあちゃんが亡くなってしまった。

 

明日は高校の卒業式。

おじいちゃんとおばあちゃんが生きていたら、とても喜んでくれたと思う。

喜ばせてあげたかったなあと思う。

 

写真を見ながらそんなふうに思っていると、机に置いてある携帯電話が鳴りはじめた。

手にとってみると、見慣れた電話番号が表示されている。

僕は目を疑った。というのも、表示されているのが、おじいちゃんとおばあちゃんの家の電話番号だったからだ。

 

 

《つづく》