光と闇の対話
光の精と、闇の精が、めずらしく話をしています。
闇の精は、光の精にいいました。
「光がいくらあっても、ひとたび光がなくなれば、そこはいつでも闇になる。」
「それはたしかに、そうだ。」
そう光の精はこたえました。
闇の精は、こうつづけました。
「光がなくなれば、そこはいつでも闇になる。光のうしろには、いつも闇がひかえているからだ。」
「光のうしろにはいつも闇があると、いいたいのか。」
「そうだ。」
光の精は、闇の精にいいました。
「光とはそもそも何か、知っているか。」
「ぜひ、おしえてもらいたい。」
そう闇の精はこたえました。
光の精は、こうつづけました。
「光とは、闇のなかに何があったのかを、あきらかにするものだ。」
「ほう。」
「たとえば、夜ふけの闇のなかには、何があるのか、わからない。しかし、光がてらせば、夜ふけの闇はなくなり、木々や道があらわれる。そして、夜ふけの闇のなかには、木々や道があったということが、あきらかになる。」
「それはたしかに、そうだ。」
「さらにいえば、こうだ。闇のなかには、何があるのか、わからない。しかし、光がてらせば、闇はなくなり、光があらわれる。そして、闇のなかには光があったということが、あきらかになる。」
「夜ふけの闇のなかには、ほんとうは木々や道がある。そして、闇そのもののなかには、ほんとうは光そのものがあると、いいたいのか。」
「そうだ。」
闇の精は、いいました。
「光のうしろには、闇がある。」
光の精は、いいました。
「闇のなかには、光がある。」