ちいさな哲学のおはなし

清水将吾のブログ

鼻とみつばち

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ある日、1匹のみつばちが、私の鼻の穴にごそごそと入ってきた。

みつばちは、鼻のなかの空洞まで入ってきて、そこでしばらくじっと休んでいた。

 

こわい鳥も入ってこられないし、大きなクモも入ってこられないし、スズメバチも入ってこられない。

きっと、安心してひと休みするのに、うってつけの場所だったのだろう。

みつばちはそのうち、もぞもぞと鼻の穴から出ていき、どこかへ飛んでいった。

 

次の日、また同じみつばちがやってきた。

今度は、ほかに3匹のなかまをつれてきていた。

あわせて4匹のみつばちは、私の両方の鼻の穴から、順番にごそごそと入ってきた。

鼻のなかの空洞を歩きまわって、何やら話し合いでもしているようだった。

4匹は鼻の穴から出てくると、どこかへとんでいった。

 

その次の日には8匹のみつばち、そのまた次の日にはもっとたくさんのみつばち、というふうに、私の鼻の穴に入ってくるみつばちの数は、日ごとにふえていった。

 

そんなある日、どこからともなく、あまいにおいがしてきた。

夢をみるような、あまいにおい。

ところが、あたりを見わたしても、あまいものはどこにもない。

それでも、あまいにおいは、私の鼻のなかを満たしているようだった。

 

どうやら、みつばつたちは、私の鼻のなかに巣を作っているらしい。

それで、どこかから花のみつをはこんできては、私の鼻のなかの巣にためこんでいるようなのだ。

 

みつばちたちは、一体どこから花のみつをはこんでくるのだろう。

私は、鼻の穴から出たみつばちたちが、どこへ飛んでいくのか、よく見てみることにした。

すると、みつばちたちは、上のほうに飛んでいっては、上のほうから帰ってくる。

 

いよいよ春がおとずれて、私の頭にも、花々が咲きはじめたようだ。