《つづき》
笑っていたおばあさんは、まじめな顔になって、僕にこう言った。
「わたしは、『このテーブルのうえでは、めったにないことが次々と起こる』と言った。これから先も、わたしの言ったとおりになるじゃろう。しかしそれはな、わたしに不思議な力があるからではない。『偶然に』わたしの言ったとおりになるのじゃよ」
僕はなにがどうなっているのか、わからなくなってしまった。
「ううーん、偶然におばあさんの言ったとおりになるとしても、どうして、これから先もそうなるっていうことまで、おばあさんにはわかっているんだろう…」
おばあさんは、まだまじめな顔をして、こう言った。
「わかっているわけではないぞ。わかっているわけではないのに、言ったとおりになってしまう。だからこそ、このテーブルは『奇跡のテーブル』なのじゃ」
「うーん、どういうことですか?」
「わたしらは、このテーブルごしにおしゃべりをしているじゃろ?わたしらのおしゃべりも、このテーブルのうえで起きていることになっているのじゃよ」
「そうか、そのおしゃべりの中で、おばあさんが『このテーブルのうえでは、めったにないことが次々と起こる』と言うと、おばあさんの言ったとおりになる…」
「そういうことじゃ。そんなことが言ったとおりになるなんて、めったにないことじゃろう?」
「…ということは、おばあさんと僕がこうやっておしゃべりしているのも、めったにないことなのか…」
おばあさんは、やっとまた笑顔になった。
「そうじゃ。男の子が遊園地に来て、友達といっしょに来たのに1人だけジェットコースターにのらずに、『魔女の家』なんかに入って、おばあさんに『奇跡のテーブル』の話をされるなんて、そうめったにあることではないじゃろう?」
僕はまたまたおどろいてしまった。
「な、なんで、僕が友達といっしょに来たことや、ジェットコースターにのらなかったことまで、わかったんですか?」
「それも、わかったわけではない。しかし、言ってみたらそのとおりだったようじゃな。これまた、めったにない偶然じゃ」
「ということは、僕が言うことも、このテーブルごしなら、めったに起こらないことになりますか?」
「ためしてみるかい?」
「はい。えっと…」
「ふふふ」
「うーんと…そうだ!」
「言ってごらん」
「僕は今日から『奇跡のノート』を書きます」
「奇跡のノート?」
「はい、めったに起こらないようなことでも、書けばそのとおりのことが起こるノートです」
「ほぉっほほ」
こんなことがあって、僕は今日からこのノートを書きはじめた。
その名も「奇跡のノート」。
またいつか、あのおばあさんのことを書く日が来るにちがいない。
《おしまい!》