ちいさな哲学のおはなし

清水将吾のブログ

魔女と奇跡のテーブル 《中》

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《つづき》

「え?このテーブルは『奇跡のテーブル』なんですよね?このテーブルに不思議な力があるから、カードをただてきとうにひいたのに、4枚ともエースだったんじゃないんですか?」

と、僕は思わずおばあさんに聞いた。

すると、おばあさんはこう答えた。

「このテーブルはたしかに『奇跡のテーブル』じゃよ。しかしな、カードが4枚ともエースじゃったのは、不思議な力のおかげではない。偶然にそうなったのじゃよ」

「偶然に?」

「そう、『偶然に』じゃ。このテーブルのうえでは、めったに起こらないようなことが、次々と『偶然に』起こるのじゃ。だからこそ『奇跡のテーブル』なのじゃよ」

 

そう言われて、僕は変な気持ちになった。そして、なんだかおかしいと思った。

「めったに起こらないことが次々と『偶然に』起こるだなんて、そんなことってあるんですか?」

「めったにはないぞ。めったにはな。でも、ぜったいに起こらないわけではない」

「なんか変だなあ」

「たとえば、宝くじで大当たりするなんてことは、気が遠くなるくらい、めったにないことじゃろう?」

「はい」

「それでも、大当たりした人が、『不思議な力』をもっているかといったら、そういうわけではないじゃろう?」

 「それは、そうですね…」

僕は考えこんでしまった。

 

「そうか、わかったぞ!」

僕は大きなこえで言った。

「不思議な力をもっているのは、このテーブルではなくて、おばあさんですね?」

「ほう、どういうことじゃ?」

「このテーブルのうえで、めったに起こらないことが次々と偶然に起こるというのは、いままでは本当にそうだったんですよね?」

「うむ、本当のことじゃ」

「でも、これから先もずっと、めったに起こらないことが起こりつづけるって、どうしてわかるんですか?おばあさんが予知能力みたいな、何か不思議な力をもっていないと、これから先のことはわからないですよね?」

「ほお、頭のよい子じゃな。ふふふ、じゃが残念。わたしは不思議な力などもってはいないぞ」

  

 

《つづく》