ちいさな哲学のおはなし

清水将吾のブログ

マカロニを「うちがわ」からかじるには?《後》

 

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《つづき》

「マカロニが3つくっついている真ん中に、穴があいてるよ!」

「それはそうだけど。どうしたの?」

「真ん中にあいてる穴は、マカロニの『うちがわ』の穴じゃなくて、マカロニの『そとがわ』にできた穴だよね。」

「まあ、たしかにマカロニの『うちがわの穴』ではないわね。」

 「マカロニの『そとがわの穴』なんて、変な穴。ねえ、食べてもいい?」

「しょうがない子ねえ。」

 

女の子が3つにくっついたマカロニをかじったとき、上のまえばと下のまえばは、3つのマカロニの「うちがわの穴」の中から、真ん中にできた「そとがわの穴」を「ぷちっ」とかみきりました。

「これで、マカロニを『うちがわ』からかじって、しかも穴もちゃんとかじれた!」

 

さて、こんなふうにはじまった一日がおわって、その日の夜、女の子はまたふしぎな夢を見ました。

 自分がまたイモムシになっていて、ほそながい穴の中にはいっています。

「ここはなんの穴の中だろう?そとに顔をだして見てみよう。」

穴のそとに顔だけをだしてみると、じぶんのいる穴の横や上にも、べつのマカロニの穴があいているのが見えました。

「そっか。ここは3つのマカロニがくっついた真ん中にある、『そとがわの穴』の中なんだね。」

 

 ところが、穴のそとのまわりをもっとよく見てみると、どうでしょう。

大きな穴は3つだけでなく、たーくさんあります。

じつは、マカロニの穴に見えたのは、ほんとうはハチの巣だったようです。

女の子はイモムシではなく、ハチのようちゅうになって、ハチの巣の穴の中にいたのです。

 

 女の子は夢からさめました。

「ああ、また変な夢。それに、なんだかちょっとこわい夢だったなあ。マカロニの『そとがわの穴』の中にいると思ったら、ハチの巣の『うちがわの穴』の中にいるなんて。穴の中にいるだけだと、そこが『うちがわの穴』の中なのか『そとがわの穴』の中なのか、どっちなのかわからなくなっちゃうんだね。」

 

まどから見える空には、まだ星がひかっていました。

「わたしはうちゅうの中で生きていると思っているけど、ここは『うちがわ』の中なのかなあ。それとも、なにかとなにかがくっついてできた『そとがわ』の中なのかなあ。」

 

 

《おしまい!》