ちいさな哲学のおはなし

清水将吾のブログ

マカロニを「うちがわ」からかじるには?《前》

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マカロニが大好きな女の子がいました。

穴のあいたやわらかいマカロニを、上のまえばと下のまえばで、「ぷちっ」とかみきるのが大好きなのです。

 

3センチくらいのマカロニなら、10回くらい少しずつかじりながら、食べることができます。

「その食べかたはやめなさいって言ったでしょ?」

とお母さんは言います。

「だってこうやって食べるとおいしいんだもん。」

 

あるとき、女の子はふと思いました。

「マカロニは大好きだけど、いままでマカロニを、そとがわからしかかじったことがないなあ。」

マカロニには穴があいているので、「そとがわ」だけではなく、トンネルのようになった「うちがわ」もあるのです。

「マカロニを、うちがわからかじって食べてみたいなあ。」

 

マカロニを「うちがわ」からかじって食べるには、どうやって食べたらよいのでしょう?

女の子は考えてみましたが、よい食べかたが思いつきません。

 

その夜、女の子は夢を見ました。

夢のなかでは、ふしぎなことに、じぶんが小さなイモムシになっています。

 

イモムシになった女の子が、じめんをはって進んでいくと、向こうのほうから巨大なマカロニが見えてきました。

ようやく近づいてみると、なんと、じぶんの体よりも大きなマカロニです。

 

 イモムシになった女の子は、大きなマカロニの大きな穴のなかに、入ってみることにしました。

 自分のほそながい体が、すっかりマカロニの中に入って、とてもいい気分です。

おいしそうなにおいにつつまれて、マカロニをひとくち、かじってみることにしました。

 

「おいしいなあ。」

そう思いながら、女の子は目をさましました。

「なんだ、夢か。へんな夢。でも、マカロニをうちがわから食べたのは、はじめてだったなあ。」

女の子は満足そうです。

 

「あれ?でも、かじったのはうちがわだけで、そとがわのほうまではかじらなかったみたい。いつもマカロニを食べるときには、そとがわもうちがわもいっぺんにかみきって、それが一番おいしいのに。」

さて、こまってしまいました。

マカロニを「うちがわ」から食べて、しかも、「うちがわ」も「そとがわ」もいっぺんにかみきる食べかたは、ないものでしょうか。

 

《つづく》