ちいさな哲学のおはなし

清水将吾のブログ

宇宙の終わりのバッハ

ものは、ただ存在するだけで、意味があるのだろうか。 誰にも知られずとも、存在するだけで、意味があるのだろうか。 宇宙を漂うボイジャーには、ゴールデンレコードが乗っている。 ゴールデンレコードには、バッハの音楽が刻まれている。 それはもちろん、…

銀杏の青

青色と黄色を混ぜると、緑色ができます。 ということは、緑色から青色を抜くと、黄色ができるはずです。 秋、銀杏の葉は、緑色から黄色に変わります。 青色が、どこかへ飛んでいくのでしょうか。 どこへ飛んでいくのでしょうか。 秋空の青になるのでしょうか…

あけましておめでとうございます

あけましておめでとうございます。 本年もよろしくお願い申し上げます。 2021年 元旦

夢に出てきたのは誰?:カヌーとフェリーのおはなし9

大きな耳のカヌーと、 大きな目のフェリーが、 おはなしをしています。 カヌー「夢にフェリーが出てきたよ。」 フェリー「へえ。なにしてた?」 カヌー「トランプで手品をしてくれたよ。」 フェリー「手品はしたことがないなあ。だからそれは私ではないよ。…

『大いなる夜の物語』を刊行します!

5月25日に『大いなる夜の物語』(ぷねうま舎)を刊行します! https://t.co/GHMcRkUJAN カヌーとフェリーにどこか似ている2人が登場します。 楽しんでいただけるとうれしいです!

先のばしをやめるには?:カヌーとフェリーのおはなし8

大きな耳のカヌーと、 大きな目のフェリーが、 おはなしをしています。 フェリー「今日はかなりすずしいね。」 カヌー「そうだね。すこしさむいくらいだね。」 フェリー「まきわりは、もうすんだかい?」 カヌー「そうだ。冬がくるまえに、まきわりをすませ…

ポストのたくさんある街

この街に住む人々は、 手紙を書くのが大好きです。 毎日、たくさんの人が手紙を出すので、 街にはたくさんのポストがあります。 あるとき、 こんな意見を言った人がいました。 「ポストの背をもっと高くしよう。 そうすれば、どこにいても、 すぐにポストを…

THE SAME SIGN

同じ掲示が 反対側にも あります。 壁の反対側へは 行くことができない。 誰が書いたのだろう。 ほんとうに、壁の向こう側にも 同じことが書いてあるのだろうか。

石にはなにがつつまれているでしょう?:カヌーとフェリーのおはなし7

大きな耳のカヌーと、 大きな目のフェリーが、 おはなしをしています。 カヌー「じゃんけんってさ、チョキがハサミで、パーが紙で、グーが石でしょ?」 フェリー「そうだね。」 カヌー「パーがグーに勝つのは、どうして?」 フェリー「紙は石をつつめるから…

翼の記憶

はるかとおい とおいむかし、 地上に 人間はいませんでした。 人間は、 空気をつつむ 翼をもち、 空をとんでいました。 あるときから、 人間は、 いろいろなものがある 地上でくらしたいと 思うようになりました。 地上を歩いて、 走るためには、 たくさんの…

まほうのまど:カヌーとフェリーのおはなし6

大きな耳のカヌーと、大きな目のフェリーが、おはなしをしています。 フェリー「やあ、ひさしぶり。」 カヌー「ひさしぶり?そうだっけ。」 フェリー「あいかわらずだなあ。何をよんでいたんだい?」 カヌー「ああ、これね。まんがだよ。」 フェリー「へえ。…

宇宙蓄音機

「蓄音機」というものを しっていますか 音をきろくした えんばんをのせると ラッパのかたちをしたところから 音がでるキカイです 「宇宙蓄音機」を しっていますか すべての星が 死をむかえると 宇宙はえいえんの闇に つつまれます そのとき いきものたちが…

あるバーへのご招待

そのバーには、 とても長い木のカウンターがある。 熟成の進んだものが飲みたければ、 カウンターの奥へ行くとよい。 長い時間をかけて、 木の香りのよくしみこんだ飲み物が、 カウンターの奥では楽しめる。 熟成のあまり進んでいないものが飲みたければ、 …

ベテルギウス

もうすでに死んでいるかもしれない ベテルギウスは もうじき破裂して 夜を明るくするかもしれないという 私が生きているあいだに その夜はくるだろうか その夜がくる前に 私が死んでしまったら 私の死はベテルギウスに どう見えるだろう

新年のごあいさつ

あけましておめでとうございます! 昨年の夏ごろから、 中編の哲学ファンタジーのようなものを 書きはじめました。 それでなかなかブログを更新できませんでしたが、 今年の春には書き終わると思います。 いろいろとお楽しみに! 今年もよろしくお願いします…

クリスタルの言い伝え

ある村に、キノコをうってくらしている男がいました。 男が、いつものように森でキノコをあつめていると、 落ち葉のうえに、なにか光るものを見つけました。 それはすきとおった石でした。 男はそれをひろって言いました。 「こんなにすきとおったガラスは見…

ふしぎなくつやさん《2》

気にいったくつをもっていき、 おじいさんに声をかけると、 おじいさんは、 「どうもありがとうございます」 と、わらっていいました。 おじいさんは、こういいました。 「わたしは、お客さまひとりひとりの足にあわせて、 ひとつずつ、くつをつくっています…

ふしぎなくつやさん《1》

あるはれた日、 まちをあるいていると、見たことのない、 ちいさなおみせがありました。 それは、あたらしくできたばかりの、 くつやでした。 ぴかぴかのガラスのむこうに、 みどり、くろ、ちゃいろ、あかの、 ぴかぴかのかわぐつ。 おみせのなかにはいって…

ぬいぐるみ裁判

「それでは、私から被告人に質問します。」 検察官は、こわい顔をしてそう言いました。 検察官の視線のさきにある、被告人の席には、うさぎのぬいぐるみが座っています。 「あなたは、子どもたちにおかしを高く売りつけるために、お店のまえに立っていたので…

トランペットの沈黙と、サクソフォンの沈黙

ある晴れた日、テラスハウスの玄関先の小さな庭で、 若いジャズバンドが演奏の練習をしていた。 サクソフォン、トランペット、ドラムス、そのほかの楽器。 隣のテラスハウスのドアから、 高名なサクソフォン奏者が出てきた。 頭をうなだれて、サクソフォンを…

ありがとうの手紙

あなたはいつも、私においしい料理を作ってくれる。 でも、私に食べさせてくれるだけで、自分では食べない。 私があなたの料理を食べようとすると、あなたはもういなくなっている。 一度でいいから、あなたといっしょに食べてみたいなあ。 いつもありがとう…

3つの5人ぐみ

まじめな5人ぐみは、 山へあそびにいきました。 まじめな5人は、 いっしょにちずをみて、 山のみちをあるき、 山のてっぺんまでたどりつきました。 5人はそこで、しきものを広げて、 おべんとうをたべました。 そして、またいっしょにちずをみながら、 …

南ではなにがみえたでしょう?

北の空をとぶタカは、 こんなものをみました。 北の空をとぶタカのいるところから、 まっすぐ東へとんでいき、 池のほとりでやすんでいた、 二羽のカモは、 こんなものをみました。 北の空をとぶタカが、 くちばしにくわえていたイモムシをうっかりおとして…

ピーター・パンとウェンディーは、こんな話をしたかもしれない

ウェンディーのお父さんとお母さんが出かけていった夜、ピーター・パンは、窓から子ども部屋へと入ってきました。 そして、ピーターは、ウェンディーにシンデレラの物語をおしえてもらい、うれしくなってしまいました。 それで、ウェンディーにもっとたくさ…

グランド・トラベラーズ《3》

《つづき》 その翌日、卒業式。 昨日のあの電話は、不思議な夢をみているようだったけど、夢ではなかった。 信じられないような話だけど、信じたい気持ちがある。 おじいちゃんとおばあちゃんは、未来でどんな暮らしをしていたのだろう。 いろいろな思いが…

グランド・トラベラーズ《2》

《つづき》 僕は何が何だかわからないまま、電話に出た。 「もしもし。」 すると、電話の向こうから、女の人の声が聞こえてきた。 「あ、つながった!よかったあ。」 「もしもし、どなたですか?」 と、僕はおそるおそる聞いてみた。 「驚かせてすみません。…

グランド・トラベラーズ《1》

僕の机には、二枚の写真がかざってある。 一枚は、昔うちにいた猫の写真。もう一枚は、亡くなったおじいちゃんとおばあちゃんが二人で写っている写真。 うちの家族は、僕が中学に入学するとき、東京へ引っ越してきた。 それまでは、写真のおじいちゃんとお…

王様の宿題

ある日のこと、王様が、いちばんえらい大臣をよんで、いいました。 「ちかごろ、わが国にこっそりとかくれて入りこみ、悪事をはたらく者がふえているという話をきいた。それはほんとうか。」 いちばんえらい大臣は、王様にこうこたえました。 「ほんとうで…

二つの窓とパラソル

私はいま、南の島にあそびにきている。 小屋の窓によりかかって、海をながめている。 窓からみえる海は、きらきらと光っている。 砂浜には、黄色いパラソルが一本、立てられている。 この窓の左のほうにも、もう一つ、べつの窓がある。 私は、左の窓のそば…

1と2の対話:2は1からどうやって生まれたの?

長い長い行列があります。 どこまでつづいているのか、わからないほど、長い行列です。 いったい、なんの行列でしょうか。 先頭には、1がいます。 1のうしろには、2がいます。 2のうしろには、3。 3のうしろには、4。4のうしろには、5… どうやらこ…