《つづき》
僕は何が何だかわからないまま、電話に出た。
「もしもし。」
すると、電話の向こうから、女の人の声が聞こえてきた。
「あ、つながった!よかったあ。」
「もしもし、どなたですか?」
と、僕はおそるおそる聞いてみた。
「驚かせてすみません。信じられないかもしれませんが、私はあなたの子孫です。タイムフォンというものを使って、遠い未来から電話をかけています。」
僕の子孫?遠い未来?僕は立ったまま頭がクラクラしてしまい、ベッドに腰をかけた。
僕がぼうぜんとしてだまっていると、電話の声はこんなふうに言った。
「この電話をかけるとき、あなたのおじいちゃんとおばあちゃんが使っていた電話回線を経由したんです。」
「おじいちゃんとおばあちゃん?」
僕は、電話が鳴ったときに表示されていた電話番号のことを思った。
「はい、おじいちゃんとおばあちゃんです。私は幼いころ、あなたのおじいちゃんとおばあちゃんに育ててもらっていたんです。」
「ちょっと…何がどうなっているのか…」
僕の頭はすっかり混乱していた。
すると電話の女の人は言った。
「ごめんなさい。ちゃんと説明しますね。私の両親は、タイムマシンを作る仕事をしているんです。私が生まれたとき、二人は仕事でものすごく忙しくて、私の面倒をみられる人が、誰もいなかったんです。」
「そちらの世界、つまり未来の世界には、タイムマシンがあるんですか?」
「はい、タイムフォンができてからしばらくして、一台目のタイムマシンが完成しました。ちょうど私が生まれたころです。」
「すごい。」
「私の両親は、タイムフォンを使って、私を育ててくれる先祖を探しました。もし引き受けてくれる先祖がいれば、私を安心してあずけられると考えたのです。」
「それで、僕のおじいちゃんとおばあちゃんが…」
「そうなんです。ずいぶん悩んだようですが、孫が東京へ行ってさびしくなったと言って、引き受けてくれたんだそうです。そこで私の両親は、できたばかりのタイムマシンを使って、あなたのおじいちゃんとおばあちゃんを、こちらに呼び寄せたのです。」
「もしそうだとしたら、おじいちゃんとおばあちゃんは、あまり長生きしなかったと思っていたけど、本当はもっと長生きしていたということですか?」
「そのとおりです。私が十歳になるまで、こちらでいっしょに暮らしていましたから。おじいちゃんとおばあちゃんは、よくあなたの話をしていました。そんなあなたに、本当のことをお話ししたいと思って、こうして電話をすることにしたのです。」
「十年間も未来にいたなんて…」
「はい。でもそのかわり、私の両親は、おじいちゃんとおばあちゃんの望みをかなえてあげることにしました。」
「おじいちゃんとおばあちゃんの望み?」
「ごめんなさい、もう通話が切れてしまいます…」
電話は、そこで切れてしまった。
《つづく》